映画「虐殺器官」の感想・レビュー。SF作家・伊藤計劃の映像化プロジェクト最終作!

34歳で夭折したSF作家・伊藤計劃(けいかく)。その著作3作品を映像化する「Project Itoh」。本作は、最終作にあたり原点となる作品でもあります。もともとこの「虐殺器官」が第1作として最初に公開される予定でしたが、製作会社が倒産。計画が頓挫するものの新たに新会社を設立し、完成にこぎ着けたという経緯があります。僕がこの作品に興味を持ったのは、書店に平積みになっていた黒バックに「虐殺器官」というフォントが映える印象的な文庫本でした。いろいろネットで調べると、この作者が「メタルギアソリッド4」のノベライズも手掛けていて、僕も非常に好きなメタルギアソリッドの小島秀夫監督と親交が深いということ。しかも、著作数作を残してすでに亡くなっている!すでにその時に、僕の中では伝説的な作家さんとなったのです。この「虐殺器官」は電子書籍のキンドルで読了。読みやすく入りやすい文体ながら、テーマが深く情報量も多い。題材的には、潤沢な予算が見込めるハリウッドのSF映画にそのまま出来そうでした。(ちなみに「オールドボーイ」の監督によって、ハリウッドで実写映画化が決まっています。)内容は、9.11以降の対テロ政策として、個人情報やプライバシーよりも「安全」を優先する近未来の世界。先進国では、網膜や指紋がデータベースに登録され、ソーシャルセキュリティー番号と紐付けられ、あらゆる場で個人認証が行なわれています。つい最近、映画「スノーデン」で描かれたアメリカ政府の個人情報監視社会が、さらに進んだ状態として描かれています。違うのは、国民自身が進んで受け入れているところ。安全は無料じゃないと言うことですね。その他、「光学迷彩」、「痛覚マスキング」、「人工筋肉」など、緻密な設定に基づくSFならではの専門用語が頻出します。さらに、そう言った近未来ハードSFの世界観に加え、題名になっている「虐殺器官」とは何か?主人公クラヴィスがその深淵に向かっていく過程は、サスペンスの傑作「羊たちの沈黙」のクラリス捜査官を彷彿とさせます。この劇場版「虐殺器官」は、戦闘シーンの見事な映像化はもちろん、登場人物たちの会話シーンもほぼ小説を再現。かなり長ゼリフが多いので、原作未読の方は置いてけぼりを食う可能性もあります。キャラクターデザインも好みの絵柄でしたし、村瀬修功監督の映像化は総じて成功と言えると思います。一つだけ、ラスト部分が原作と少し違うので、未読で興味ある方は小説も読んでみてください。きっと、ハマりますよ。僕も今読んでる「ハーモニー」を早く読了しようと思います。

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