SFが好きな私。SFといっても、もっぱらそれはSF映画のことを指します。中でもタイムトラベルSFは好きなジャンル。メチャクチャ好きな「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、日本のライトノベルを原作にしたトム・クルーズ主演のゲーム感覚SF「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
、30年後の自分が自分を殺しに来る「LOOPER/ルーパー」
、タイムトラベルSFをラブストーリーに昇華したロマンチックな「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」
」などなど、枚挙にいとまがない。そんな中、前々から興味を持っていた「SF小説」の中で、面白いものを読んでいこうと手に取ったのが、「時砂の王」
でした。
歴史ものとしても楽しめる?!一粒で二度おいしいSF小説
冒頭の舞台が、なんと日本の邪馬台国の時代。いきなり卑弥呼が登場します。卑弥呼は2人の主人公のうちの一人。この設定だけで、歴史好きの私は惹かれました。なかなか海外の人には思いつかない設定。やはり日本人作家ならではですね。卑弥呼のキャラクター設定も興味深い。DCコミックスの映画「ワンダーウーマン」を彷彿とさせる「私についてこい!!」系のカッコいいヒロイン。ただし、女性的な優しさや弱さも兼ね備えています。もう一人の主人公が「オーヴィル」というアンドロイド。「メッセンジャー」と本作では呼称されているのですが、いわゆる人造人間ですね。それほど詳細に描写されてはいないのですが、人間によって作られ、人間にそっくりな外見の人工の有機生物のようです。謎の敵性生命体に、未来の地球圏で壊滅的な打撃を受けた人類が「オーヴィル」たちメッセンジャーたちを過去の世界に送り込んで、歴史を改変しようとしているのが本作の舞台設定。「時間遡行SF」とでもいうのでしょうか。大変に興味深い設定です。もちろん、遠い未来からいきなり邪馬台国の時代にやってきたのではなく、26世紀や22世紀の時代で闘いを繰り広げてきたのですが、そのたびに苦汁をなめさせられてきた。その幾百の戦いを想像すると圧倒されます。2人のキャラクター造形も大変魅力的ですし、人間ではない「オーヴィル」の愛、ラブストーリー的な側面もエモーショナルに描かれていて、否が応でも感情移入してしまいます。なぜ、人類は存続しなければならないのか。種を保存、維持しようとする本能とは何なのか。とても大きな命題についても考えさせられる傑作SF小説。ハリウッドでも映画化されてもおかしくない題材です。
あとがき
今回、紹介させていただいた「時砂の王」。
なにか面白いタイムトラベルSFを探している方には、うってつけの良作でした。オススメです!